したね。その後あなたはおさわりなくおそらく「親和力」の翻訳にいそしんでいられることと思います。その書物は私が心をひかれ、そしてまだ得読まずにいるものですから、あなたの忠実な翻訳によって読むことができるのを楽しみにして待っています。私は「父の心配」という現代もののドラマを書いています。毎日寝床で。仕事と読書と祈祷と音楽とで暮らしています。先日お絹さんの母が亡くなりまして、今朝納骨式に地三をつれて里へ帰りました。今日はたいへんな嵐で海が荒れています。
 今晩この手紙を書く前にムーンライト・ソナタや、葬送曲をききました。不思議なことに巻頭にあるベートーヴェンの写真が君にたいへんよく似ています。私の「俊寛」を読んで下さったかしら。方々からいろいろ言ってきましたが、そのなかで長与善郎君が永久的なクラシックだといってほめてくれたのが一番私をよろこばせました。機があったら読んで下さい。お絹さんはたぶん十日ばかり留守になるだろうと思います。
 それから「紡ぎ車のグレートヘン」のテキストがわかればついでの時に教えて下さればたいへんよろこびます。私は次から次へと仕事の計画に満ちています。もし私の健康さえ保
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