れから読むのがずいぶん楽しみです。あなた自身の初めての著作を心から御祝しいたします。読み終わった後でいずれ私の感想を書いて送ります。先日のお手紙にありました、私のあなたに宛てた手紙集を読みたいとおっしゃる哲学科の人には、私は少しもさしつかえありませんから見せてあげて下さい。私が仕事を初めるまでの二、三年間の努力と悩みとがあなたに宛てた手紙のなかに最もよく現われていると思っています。ひとりの友にあれだけ身を入れて手紙を書くことは、この後の私の生涯にもめったにあるまいと思われるくらいです。
 私は私の、悩みの多かったけれど、それをくぐってしだいに一つの恵まれた静けさに向かって成長してきた魂の歩みの記録として、これらの手紙に対して、愛とそして泪《なみだ》をさえ感じます。何となれば悩みはその後けっして減ぜられずしてますます重く、課せられたにもかかわらず、私の心がある恵みに向かって高められて来つつあるからです。そこには私の醜さと拙なさとが痕《あと》つけられてあるとはいえ、私はそれをあまり恥ずかしいとは思いません。
 私は、先月二十六日にはあなたを心待ちしていましたが、御都合でいらっしゃいませんで
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