淡だと思って心が咎められ、読めば苦しいのです。何もかも私の心には適いませんから。そして同胞を救う力がないことをまざまざと感じさせられますから。私はどうも周囲の出来ごとに心を乱されずに生活することはできません。そして周囲が幸福でなくては私も幸福になれません。私はしみじみとミットレーベンということを感じゴッホのコラボレーションを思います。そして私の天稟《てんびん》のなかに何らかのよきものがありますならばそれを他人に与えるような生活がしたいと思います。
私は長らく病院にいてそして歩むこともできませんけれど、生活内容には不自由いたしません。私には天も星も樹木も草花も鳥もまた何よりも人間の群れが私の周囲にあります。幾多の問題を含んで私に臨みます。私が十分まじめでありますならば、私は生活の材料を失いはしません。私は退屈などは申したくございません。久保さん、私はあなたに悦んでもらうことには私はだんだん愛の人となるようです。時々は愛の強い衝動を感じます。この間も窓によって空にきらめく星屑《ほしくず》と満潮した川面のふくらみと岸べの静かな森とを眺めた時、私は調和と愛との深い感動を抑えることができず、あ
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