あ愛したい、許したい、と涙をこぼして神に祈りました。
私の健康はまだたびたび長い手紙を書くに適しません。たよりが遅くなってすみません。私は二、三日中に謙さんにいい長い手紙を書きます気です。謙さんにお会いになったら許してもらって下さい。謙さんの家で私の妹に会われたら、友人になってやって下さい。そして絵など見せてやって下さい。
今日はこれで筆をおかしてもらいます。[#地から2字上げ](久保正夫氏宛 二月十二日。広島県病院より)
三度の手術もむなしく、病院を去った長き忍耐の日
私は筆を持つとじきにあなたに訴えたき気持ちになるのです。私は今外科部長と話して別れたばかりです。そしてその話はどんなに心細いものでしたろう。実は私の傷は一週間前までは非常に良経過にて、この様子ならば近日中退院して温泉へ行けと部長も言っていたのです。それで私も東京の妹や故郷の両親にもその旨を通知しました。ところが一昨日頃から傷の模様は急変しました。そしてまたもやフィステルになりました。
「部長さん、切るべきものなら切って下さい」
私は四度目の手術とその後の永き忍耐をいとわぬ覚悟で問いました。
「そうだね
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