質を持っているのです。眉の濃い大きな大きな眼を持ったいい子なのですが、体はまだ十四、五の子供くらいしか発育していないので、畸形的《きけいてき》なみじめな印象を見る人の心に感ぜしめます。この子は来客――それは親戚の人でも――があると、その醜い姿を見つけられまいために、すぐに自分の部屋ににげ込みます。父母がそうしろと命じてあるのです。初めは私にもそうしていたのです。けれど私の愛が勝って、彼女は私のものになりました。私にだけ何でも話します。私が行くと実に悦びます。私は小説をかしてやったり、たびたび手紙をかきます。いつもはひとりで裁縫などしています。昨日も夜に入ったので私が暇ごいをすると、泣くようにして私に泊ってくれよと嘆願しました。私はまけてしまって、叔父、叔母に対しては気がねでも、その子のために泊りました。今朝私としばらく二人きりになった時、その子は大きな大きな眼にいっぱい涙をためて、自分のはかなさを訴えました。私はできる限りの愛の雄弁で彼女をなぐさめ励ましました。そして暖かい日に、彼女を丹那の私の家に連れて来てやるという堅い約束をして、やっと別れて帰りました。
 その時お絹さんが、私にか
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