のひとりの小さな従妹《いとこ》が私のなぐさめを待ちわびているのを思い出しました。そしてあなたの手紙で濡らされた心で、すぐにその従妹をなぐさめてやろうと思いました。そしてすぐ車で(私は腰の神経痛で歩行がたいへん不自由になっていますので)従妹の家に行きました。車の上で私は、あなたが、正月の元日を、謙さんや江馬君やその奥さんと、たのしく往来して暮らされたのを思って心から幸福に感じました。
あなたにはそのような類《たぐい》の幸福がこれまで恵まれることがあまりに少なかったように思われましたので、江馬君の宅で遅くまで話し込んで泊ったりなさったのですね。
あわれな病める十八になるせむしの処女は、私を見て気の毒なほど喜びました。足がまがって歩くことがむずかしいのに塀にすがって迎えに出ました。玄関までいそいそとして、脊髄病で嫁入りできない不具者なのです。いつか病院からこの娘について、手紙に書いたと記憶していますが、その家で炬燵《こたつ》を囲んで、その娘の父母、その兄や妹たちと花合わせなどして夜になるまで遊びました。父、母は物質的な人なのに、その娘は病身なせいかもののあわれを早く知って、精神的ないい性
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