問題
新しい年が来ました。今年があなたに豊かな祝福をもたらすことを祈ります。東京の松の内の賑わしさなど想像いたします。どのようにしてお過ごしなされますか。
丹那は淋しいお正月です。私たちは二人で心ばかりの祝いのお雑煮餅もいただきました。艶子が二十九日に帰ってからはたいへん淋しくなりました。
私はやはり丹那に隠遁してひそかな松の内を送るでしょう。階下の農夫の夫婦と話したり、近所の子供たちでも集めて花合わせでもしたりするでしょう。
あなたの新潮社から出されるトルストイの「人はどれだけ土地を要するか」という小話はかつておもしろく読みました。平和ということが第一なのを忘れて貪欲になってはいけないのですね。土地を耕して生きてゆくのが一番安定した健全な暮らし方なのでしょう。
あなたのお手紙にあるように、私も私のパンを父母の労苦から得ているのが気になってならないのです。けれど鍬《くわ》を持つには健康が侵され、ペンではお金を得るどころでなく、お金がかかるようなしだいで困っています。あなたのおっしゃるように、私たちが自分たちの雑誌を持ち、それを自分たちの労働で支えることができるならばフェボラ
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