私はあたかも鬼界ヶ島に流された俊寛をドラマに描こうと思っていたので、ことにおもしろく読みました。私は俊寛が鬼界ヶ島に流されて、年老い一緒に流されて苦しみと淋しさを分かっていた二人の仲間は、迎いの舟が来て京に帰り、ただひとり残された淋しさを描こうと思うのです。そして清盛に反抗するいっさいの手段は尽きたけれど、ただ一つ呪うことはできる、それで平氏の子孫の裔《すえ》にまで呪詛《じゅそ》を遺して死ぬところを、その呪詛を眼目にして描こうと思っています。
 私は今は「人類の愛」という喜劇を描いています。愛を口にして、隣人の運命に不注意な文士のカリカチュアを描く気です。私はたくさんかきたいものがあるのですが、生命の川は一ページ約五十銭の印刷費を自分で持たねばならぬので、短いものしか描かれず、困っています。謙さんに新思潮を交渉してみてもらったのですが、これもお金を出さなくてはならないそうです。どこかお金なしで作を発表できるところはありますまいか。「愛と知恵との言葉」ものせる余裕がないのです。「出家とその弟子」は完成しました。生命の川は正月を休刊したので、二月からのせると四月にならなくては終わらないので
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