すます人生は私に淋しく、つらきものになりそうです。私は心のうちに寺を建てることを急がなくてはなりません。私はあなたにも実にすみません。私はわがままで身勝手をいたします。私はそれをよく承知しています。許して下さい。私は人を、おのれをむなしくして愛するにはあまりに貪婪《どんらん》で、執着心が強過ぎます。自分のことばかり考えています。そのくせ他人の愛を求めてその薄いのを怨むのです。
あなたは人並みでない、独自な心の生活をしだいに深くしてゆかれるように私には見えます。そして他人にはうかがわれないような、知力や意力の非凡な人のみ持つことのできるような世界を魂のうちにつくってそこに棲むようにおなりなさるのではありますまいか。それは淋しいものでしょう。山の中の湖水のような、他から何とかいって浅く、普通な見識で裁くことはできますまい。あなたの世界も淋しい、不幸な、人に毀《こぼ》たれないようなものを望んでいられるように見えます。私も心のなかに寺を建てたいのです。人の批評に超越した安息の場所を。それは不幸な苦しいものに打ち克つ魂の力によってのみ成立するものでありましょう。私もなにとぞほかの境遇とはかけ離
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