そのかいしょがありません。私はそのために姑息になってしまいます。死ぬれば死んでもよいと覚悟すればできましょうが、私はその気になれません。からだのことが気になります。じきに病気がひどくなりそうです。それに来春からできる子供のことも気になりますので、私は父母にたよることになります。するとそこから姑息な罪悪が続出するのです。天香さんは私の一家をあげて道場にせよと勧められます。しかしそれは菩提心のない父母や家族に強いるべき性質のものではなくて、私ひとりで初めなければならぬことです。しかしこれも私の病気のためにとてもできそうにありません。
ことに私を最も深く悩ますのはお絹さんと私との関係です。私が病気になったのもほとんどその心配からです。どうも父母との間、私との間、妹との間、親戚との間がことごとくうまくゆきません。それにはさまざまな事情が各自にあるのです。だれも無理はないともいえるし、だれも悪いともいえます。私は私を責めています。私の知恵と徳の足りなかったのを悔いています。私は忍耐します。何も許します。私の過失の結果をにないます。
そのようなしだいで私は祝福されていません。苦しんでいます。ま
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