のような性格には一燈園はもっともふさわしいところと思われます。
 天香さんは近く上京せられる由、その節はあなたにも会われることでしょうが、ものの考え方や、身の持ち方が、あるいはあなたには心にしっくり合わないかもしれない、とひそかに危ぶんでいます。天香さんはあたかも、あなたと私との性格の相違した部分を誇張して具象化したようなふうにあなたの前に現われるかもしれません。けれど博くして、理解の細かなあなたは天香師をもつつみうることとは信じています。
 私の家は姉の死によって起こされた変動のために後始末を整えなくてはならないことになっています。あるいは一家を引きあげて東京近くに移住するような議も出ていますが、さまざまの事情ではたしていかになるかはまだ定まりませぬ。
 一番かわいそうなのは和枝という子です。和枝はおそらく母とともに父をも失うことになりましょう。この間の夕ぐれも、私が亡き姉の生前中のことなど思いながら、田圃みちを散歩していますと、向こうの畦《あぜ》のようなところを乳母が和枝を抱いて、おのが家に帰って行くのを見かけました。私は近づいて乳母と一緒に姉の新しい墓のところまで歩きました。乳母
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