ものであることを知ってきましたから、むしろそのたたかいに同情いたします。佐野文夫君などはそのたたかいのために非常に悩んでいました。そして私の知ってる限りではそのたたかいにまだ成功してはいませんでした。私はただその苦闘を祈りによって、たえず続けてゆける人を尊敬いたします。私などがいうべき限りではありませんけれど、あなたの認められるあなた御自身の欠点は私もたしかに認めています。
さまざまな尊き内容を持つ言葉や文字が、十分に実践的な意志を伴なわずに表現せられるときには、それのエフェクトはインテンシチーの足りないものとなって受け取られます。読む人は軽く、受け流してしまいます。博識の人たちに多い欠点と思われます。上田、森、姉崎博士たちからは、私たちの生命、こころ、の糧《かて》は与えられぬように思います。ほんとうは、聖者たち、あなたの好んで訳さるるフランシスのごとき実行家からばかりまことの深い感動は与えられますね。そしてフランシスのごときものを物語的な心持ちで読むほどの冒涜《ぼうとく》は少ないと思います。一杯の水を隣人に乞う心と、カフェで紅茶を飲む心持ちとはまるで似ていないのに、私たちは紅茶の後
前へ
次へ
全262ページ中163ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング