私は、私らしい、淋しい共棲生活をいたしましょう。あなたのお優しいアドヴァイスは嬉しく心に納めました。私たちは、淋しい、睦じい暮らし方をし、愛と赦しと労いとを博《ひろ》く、あまねく、隣人に及ぼしてゆく気ですから悦んで下さい。
私たちはどうせ、東京に参ります。しばらく京都で暮らします。お絹さんは東京のような、華《はな》やかな都に行くのは、はれがましく、私の友人に会うのは自分の卑しさが気にかかり、また東京は美しい女の多いところゆえ、私の醜さが眼に立つから行きたくありませんというので困っています。
艶子にも東京に出るように勧めてもらっていますが、あなたも今度京都にいらして、東京に行く気になるように勧めてやって下さい。正夫さんの結婚問題は、私はどうもまだ熟していない気がして、賛成できません。正夫さんには、くれぐれも慎重な熟慮を持たるるようにお願いしておきました。それでは、今日はこれで、筆をおきます。では大切になさいませ。たぶんお目にかかれることと思っています。[#地から2字上げ](久保謙氏宛 四月六日。京都より)
美的態度と愛の実践との接着になやむ
あなたは私があまりに長らく便り
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