態に恢復いたしましたから悦んで下さい。
 昨日は、また、久しぶりに、めでたく卒業した、愛する妹が帰って来まして、七条駅まで迎えに行き、昨秋以来の、なつかしい逢瀬《おうせ》の、互いに労《ねぎら》う挨拶を交わす時にも、兄妹ともしあわせな心地につつまれました。
 私の新しい家に着くと、お絹さん――これは別府の時から、妹を渇仰してるのです――が、かいがいしく、いろいろと世話をして、荷物の世話などしてやりました。天香さんにも通知をして悦んでもらいました。これからしばらく、京都で三人暮らすことになります。私の住所は、東山の麓《ふもと》に近い、田圃《たんぼ》のなかの淋しいところにあります。父からもらう少しのお金で、三人貧しく、睦じく暮らすつもりです。お父上がお国から見えになるそうですね。その後で私のとこへもいらしていただけるかもしれない由、もし、そうできたなら、私はどれほど悦ぶか知れません。正夫さんとは昨夏をああして二十日も一緒に暮らせましたけれど、あなたとは三年夏のなかばの日に、カフェで別れたきり、お目にかからないのですものね。まことにずっと昔の、昔のことのような気がいたします。
 四月は京都のも
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