したいと考えます。お絹さんのことも詳細打ち明けて相談いたしました。そして天香師の勧告と私の熟慮の末、お絹さんをも一燈園に来るように勧める決心をいたしました。お絹さんはこのたびの騒動で病院は辞職しなければならず、パンにも苦しんでいる状態です。そしてどうしても私と別れる気がしないならば一燈園に来ればお金はなくとも天香師が引き受けて下さるのです。そして天香師のいわるるには、さきのことは神のほか知るものはない。今は夫婦約束などせず、ともかくも共に信仰生活にはいって修業するがいい。その間にもし神意ならば、結婚してもいい時期が熟するだろう、あるいは僧と尼としてフランシスとクララのごとくに暮らしてもいい、ともかく先のことはわからない。今は両人とも人間としてなくてかなわぬ唯一のものを求むるがよい。もし女に菩提心《ぼだいしん》あらば一燈園に来させよ、との勧めでした。私も熟考してみるに、この方法が最も私の心にも適い、真理に即したる解決のごとく思われます。それで私はその方針を取ることに定め、尾道の私の叔父の尽力を乞い、その運びにするつもりです。もとよりお絹さんの決意はお絹さんに任せるほかはありません。はたし
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