く不面目に感じて、私を恨みました。私はお絹さんの身の上を心配して、お金や電報や手紙を出しましたが何の返事もありません。どうしているのかわかりません。ただ病院のほうは辞職して太田看護婦会長の家に監禁せられていることだけわかりました。国許の両親はお絹さんをお嫁にもらえと勧めます。また親戚もみなお絹さんと結婚せよと勧めます。そうすればお絹さんもどれほど悦ぶか知れないのです。けれど私は今は宗教的生活の深いねがいを持っています。それに妻を養うかいしょがありません。今の私の心に描いている生活はどうも結婚生活とは調和しそうにありません。私は一概にお絹さんと結婚しないというのではありません。けれど今の私はそんなことをしてはいられない気がするのです。
 私は一昨日尾道を無解決のままに放擲しておいて京都に来て西田さんに会いました。そして西田さんの話を聞いてまことに畏れ入りました。私はこれまでの私の生活やまた文壇の今の人々の生活などの虚偽と空虚とを衝《つ》かれました。そして恥ずかしくまた uneasy になりました。
 私は西田さんは実に偉いと感服しました。この後は一燈園にとどまり、天香師を善知識として修業
前へ 次へ
全262ページ中136ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング