由を得ているそうです。すでに御承知かもしれませんが、よほど深い偉い人らしいです。魚住さんはこの人を昔の仏徒よりも偉いといって感心しています。死んだ梁川のひとりの友だちで梁川はこの人の小著「天華香録」を読んで自分の「病間録」を焚いてしまいたくなったと恥じたそうです。「この人ほど人生の深い悲哀を知れる人はなく、この人ほど、その悲哀に打ち克って平和を得たる人はない」といっています。私はかねてシューレのようなところでなく、ありがたいという感じのする高僧のそばに侍して修業したいと思っていました。それで私はこの人の弟子にしてもらおうと思います。京都在の一燈園という寺がこの人の Ordo のようなところなのだそうですが、この頃は東京にいられるそうです。私はそれで岩波さんのところへ尋ねてやりました。西田氏の在所がわかれば、私は父に頼んで、一日も早くこの人の教えを受けたいと思います。姉は養生先から帰らなくても、私の一大事のゆえに、父に頼んで早く庄原を出させてもらおうと存じます。考えてみれば私は、著書のことなどはむしろどうでもいいことです。また父に気の毒だといっても私の家にいて何一つ孝行もできません。それ
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