が滲みます。私たちは、地上ではどうせ罪を他人に犯さずにはいられない。赦し合わないならば、どうして交わるよすががありましょう。だから私にあなたはまったく安心して、私のおもわくなど気にせずに交わって下さい。私もそのようにいたしましょう。
庄原をお立ちなさってから、今日までの御様子は、たびたびの詳しいお便りでよくわかりました。宮島の海岸での少女を連れたフランス人の婦人の話や、坂手島の女の水汲みの話や、またことに星かげのうつる夕なぎの海べに、淋しきキリストの悲哀や、あの可憐なお友だちのお妹さんの今は天国にある魂について語りなさったところなどまことになつかしく感動して読みました。この夏休みの四十日の旅があなたに感謝をもって思い出され、前よりも愛とまじわりの心地に和らげられて感ぜられることは実に尊いしあわせなことと思われます。ロバートソンの説教集は私も読んでみましょう。また「母たちと子たち」も早く読む機会を持ちたいと思います。まだお目にはかかりませんけれど、あなたのお母様は私にも愛の誘われるような心地もいたします。
あなたと別れてから、私は急に淋しくなり、沈鬱《ちんうつ》な気分におそわれ、とり
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