ともできないのか。わしの生命《いのち》の根は執念《しゅうねん》深く断ちきれない。このあさましいわしの業《ごう》をいつまでもさらさせようとするのか。食を断っても断っても死にきれぬ蛇《へび》のように。わしの力はわしの四肢《しし》からもう失せたのにわしの根はいつまでも死にきらないのか。運命はあくまでもわしを責《せ》めさいなもうとするのか。わしは死にたい。死にたい。ただ恨《うら》みだけがわしの生命を燃《も》やしているのだ。わしは死んでただわしの恨みだけが生きているのだ。わしは恨みそのものだ。わしは生きながらの怨霊《おんりょう》だ。(耳をそばだてる)あゝ風の音か。わしの子どもが泣いているような気がしたのだが。
有王 (登場、魚と荒布《あらめ》とを持っている)ただいま帰りました。
俊寛 (なお何者かのあとを追うごとく)あゝ帰ったか。
有王 ご気分はいかがでございます。(俊寛のそばによる)
俊寛 わしの根はますますはっきりするばかりだ、わしの身体《からだ》は日に日に衰《おとろ》えてゆくのだが。
有王 (つくづくと俊寛を見る)ご主人様、なにとぞ私の申すことをお聞きください。今夜は心を静めて何か召し上が
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