ったほうがあなたの役目にもかないはしますまいか。はるばるこの島まで来たことがむだにならないためにも。
基康 (黙ってしばらく考える。やがて信ずるところあるがごとく)では念のため、も一度だけお尋《たず》ねする。ご両人俊寛殿を残しては都《みやこ》へ帰る気はありませぬな。
成経 俊寛殿を一人残してわしだけ帰る気はありません。
康頼 わしは友を見捨てるに忍《しの》びません。
基康 では三人の意志はたしかに聞き届けました。都にたち帰ってその旨《むね》を清盛《きよもり》殿に伝えましょう。
俊寛 (恐怖を隠《かく》そうとつとめつつ)それではあなたの役目がたちますまいが。
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成経と康頼、基康を凝視《ぎょうし》す。
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基康 わしはこの命令の執達吏《しったつり》にすぎないのだ。わしは清盛殿の意志をあなたがたにお伝えすればそれでいいのだ。あなたがたがそれを受けようと受けられまいと、それはわしの立ち入る限りではない。
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三人沈黙す。
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