る。二人だけ都《みやこ》へかえして、あなただけをこの島に残すというはずがないではないか。わしらは同じ罪に座して配流《はいる》されたのだから。
俊寛 もしあったとしたら。
成経 わしはも一度くり返してあえて言おう。あなたを一人見捨てて都へ帰るほどなら、わしはこの島で餓死《がし》することを選ぶ。
康頼 生きるも死ぬるも三人いっしょだ。
俊寛 それを誓《ちか》ってくれ。誓ってくれ。
成経 (弓を天にささげる)わしは名誉ある武士のすえだ。わしは弓矢にかけて誓う。あなたと生死をともにすることを!
康頼 わしは神々の名によって誓う。天神《てんじん》よ。(天に息を吹く)地祇《ちぎ》よ。(地に息を吹く)わしは永久に友を見捨てませぬ。
俊寛 (静かに泣く)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから5字下げ]
長き沈黙。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
成経 (突然|沖《おき》を見て叫ぶ)いよいよきまった。あの船はもうこの島に必ず来る。あすこまで来たからにはもうだいじょうぶだ。いつも方角《ほうがく》をかえるのはもっとずっと遠くの沖《おき》だから。わしの考えでは、あの船
前へ
次へ
全108ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング