あなたは感じやすい心を持っていられる。もしあなたが荒々しくなったとしたら、それはあなたがあまりに不幸だからだ。
成経 (和解を求めるように)そうだ。われわれはこの上もなく不幸なのだ! その不幸を三人で分け持たなくてはならない。われわれの心が少しでもかろくなるために、われわれが苦しみに負けてくずれてしまわないために、力をあわせなくてはならないのだ。
俊寛 (嘆息する)わしはあなたがたがだんだんわしをきらうようになるような気がする。そしてそうなるのは無理はないと思う。わしは実際いっしょに暮らしよい人間ではない。自分でそれを認める。わしはきらわれてもしかたがない。あゝ、しかしわしはさびしいのだ。きらわれたくはないのだ。愛されたいのだ。それだのにわしは荒いことを言う、ひねくれたことを考える。気まぐれな小鬼《こおに》めがわしの生命中に巣を食《く》っているようだ。わしの気質は自分の自由にならないのだ。わしは孤立無縁《こりつむえん》の霊魂《れいこん》だ。人とやわらぐことのできない粗野《そや》な性格だ。わしはわしを呪《のろ》う。わしを憎《にく》む。おゝわしをあわれむ。
康頼 俊寛殿。心を平らかにしてく
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