くなる。わしは小さい時からそのために皆にきらわれてきたのだ。その気質を自分でどんなにきらったろう。しかし変えることができなかったのだ。わしの祖父の血がそうなのだ。わが氏《うじ》の遺伝《いでん》なのだ、わしの運命は不幸になるにきまっていたのだ。いやわしの魂をつくっている要素、わしそのものが不幸なのだ。わしの魂は鎌首《かまくび》をもたげていつもうろうろしている。心の座《ざ》が[#「座《ざ》が」は底本では「座《き》が」]定まらない。わしは失われる人間なのか。地獄《じごく》におちる人間なのか。(ほとんど慟哭《どうこく》に近いため息)あゝ。
康頼 (傍白)あゝ何という不幸な目つきだろう。暗い影が一ぱいさしている。
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三人沈黙。山鳴りいよいよ激しくなる。
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成経 あゝまた山が荒れるな。
康頼 明日《あした》はいよいよ雨だな。(空を仰ぎ嘆息《たんそく》す)あのしつこい。退屈な。
成経 (力なく)明日はしけだ。船の姿《すがた》も見られぬわい。
俊寛 (山のほうを見る)あゝ。あの山くらい
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