》の墓をあばいた信西《しんぜい》は、頼長の霊に呪《のろ》われて平治《へいじ》の乱には信頼に墓をあばかれた。信西の霊は清盛について、信頼を殺させた。今信頼の霊は成親殿にのりうつった。
成経 おゝ神々よ。
俊寛 しかし成親殿は世にもみじめな最後をとげた。父の恨《うら》みを相続するものは子でなくてはなるまい。成親殿の怨霊はあなたにつくに相違ない。
成経 あなたは悪とたたかって難にあったわれわれをいたずらに醜《みにく》い復讐心《ふくしゅうしん》を満たそうとして失敗したあわれむべき破産者におとしてしまおうとするのか。正義に殉《じゅん》じた父をただの犬死にさせ、あの堪《た》えられないほどな恥《はじ》な最後にも相当していたような、醜い人間にしてしまおうとするのか。(俊寛につめ寄せる)
康頼 (なだめるように)成親殿《なりちかどの》は今は平和に眠っていられるとわしは思います。
俊寛 (苦しそうに)その正義の観念の上にはっきり立っていられなくなりだしたのがわしの苦しみなのだ。いかなる困苦《こんく》と欠乏とに悩《なや》もうとも自分は正しきものである! かく考えることによってわしは自分の不幸を支えていた。し
前へ
次へ
全108ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング