みとかいうような、すべての潤《うるお》うた感じを殺してしまうようないやなものでした。いったいこの島にはえている草や木はどうしてこんなに醜《みにく》いのでしょう。わしはすべての陰気なものを生み出すような祠《ほこら》の陰の湿地《しっち》にぐじゃぐじゃになって、むらがりはえた一種異様な不気味《ぶきみ》な色と形をした無数の茸《きのこ》を見つけました。その時わしはたまらなくなって立ち上がりました。わしは餓鬼《がき》の祠《ほこら》を拝んでいるのではないかという気がしたのです。
康頼 (力なく地面を見つつ)地獄《じごく》の底にも神はいられます。
俊寛 あゝ、あなたがそのとおりの言葉をもっと自信をもって言ってくだすったら!
康頼 法華経《ほけきょう》の中にも入於大海仮使黒風吹其船舫飄堕羅刹鬼国其中一人称観世音菩薩名者是諸人等皆得解脱羅刹之難《じゅおたいかいけしこくふうずいきせんぼうひょうだらせっきこくきちゅういちにんしょうかんぜおんぼさつみょうしゃぜしょにんとうかいとくげだつらせつしなん》とかいてあります。
俊寛 権威《けんい》をもって言ってください。それはうそではありませんか、あなたは信じますか。
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