字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
唯円 お師匠様、あの(顔を赤くする)恋とはどのようなものでございましょうか。
親鸞 (まじめに)苦しいものだよ。
唯円 恋は罪の一つでございましょうか。
親鸞 罪にからまったものだ。この世では罪をつくらずに恋をすることはできないのだ。
唯円 では恋をしてはいけませんね。
親鸞 いけなくてもだれも一生に一度は恋をするものだ。人間の一生の旅の途中にある関所のようなものだよ。その関所を越えると新しい光景が目の前にひらけるのだ。この関所の越え方のいかんで多くの人の生涯《しょうがい》はきまると言ってもいいくらいだ。
唯円 そのように重大なものですか。
親鸞 二つとない大切な生活材料だ。まじめにこの関所にぶつかれば人間は運命を知る。愛を知る。すべての知恵の芽が一時に目ざめる。魂はものの深い本質を見る事ができるようになる。いたずらな、浮いた心でこの関所に向かえば、人は盲目になり、ぐうたら[#「ぐうたら」に傍点]になる。その関所の向こうの涼しい国をあくがれる力がなくなって、関所のこちらで精力がつきてへとへとになってしまうのだ。
唯円 では恋
前へ
次へ
全275ページ中82ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング