信じていますから。
僧二 私はきょう話そうと思います。皆様はこの法悦の味を知っていますか。もしこの味を知らないならば、たとい皆さんは無量の富を積んでいようとも、私は貧しい人であると断言いたしますと。(肩をそびやかす)
僧三 それは思い切った、強い宣言ですな。
僧二 若いむすこや娘たち――私は言おうと思います。皆様はこの法悦の味を知っていますか。もしこの味を知らないならばたとい皆様は楽しい恋に酔おうとも、私は哀れむべき人々であると断言いたします。
僧三 若い人々は耳をそばだてるでしょうね。
僧二 私からなんでも奪ってください――私は言おうと思います。富でも名誉でも恋でも。ただしかしこの法の悦びだけは残してください。それを奪われることは私にとっては死も同じ事です。
僧一 ちょうど私の言いたい事をあなたは言ってくださるようにいい気持ちがします。
僧三 私も同じ心です。その悦《よろこ》びがなくては私たちは実にみじめですからね。僧ほどつまらないものはありませんからね。私もその悦びで生きているのです。
僧二 私はその悦びは私たちの救われている証拠であると言おうと思います。私たちはこの濁《けが》れた
前へ
次へ
全275ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング