ものですか。あんな所に立っていたら凍え死にしてしまいますわ。
左衛門 でも気になるから、見て来てくれ。
お兼 見て来るには来ますけれどね。(手燭《てしょく》をともし、庭におり、戸をあけて外を透かして見る)あら(叫ぶ。外に一度飛んで出る。それからまた内にはいる)左衛門殿。早く来てください。来てください。(外に飛び出る)
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左衛門、緊張した、まっさおな顔をして外に飛び出る。松若母の声に目をさまし、父のあとからついて出る。三人の僧驚いて目をさまし、身を起こす。
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お兼 まあ、あなたがたはまだここにいらしたのですか。この雪の降るのに、この夜中に。まあ、どうだろう。冷たかったでしょう。凍えつくようだったでしょう。
左衛門 (親鸞に)私は……私は……(泣く)許してください。(雪の上にひざまずく)
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親鸞、感動する。少しおどおどする。それから黙って左衛門の肩をさする。
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お兼 根はいい人なのですからね。根はいい人なので
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