すからね。
慈円 (涙ぐむ。小声にて)南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》南無阿弥陀仏。
良寛 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
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異様な緊張した感動一同を支配す。少時沈黙。
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お兼 どうぞ皆様内にはいってください。炉にあたってください。冷たかったでしょう。この夜中に。薄い衣きりで。ほんとにどうぞはいってください。(親鸞の衣より雪を払う)こんなに雪がたくさんかかって。(内にはいる)
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左衛門続いてはいる。親鸞、慈円、良寛、沈黙して内にはいり、雪を戸口で衣より払い庭に立つ。
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左衛門 (座敷に上がる)どうぞ上がってください。お兼たき木をたくさんついでくれ。
お兼 (たき木をつぎつつ)どうぞ上がってください。炉のそばで衣をかわかしてください。
親鸞 (弟子に)ではあげてもらいましょう。(草鞋《わらじ》を脱いで座敷に上がり炉のそばに寄る。慈円、良寛それにならう)
左衛門 宵《よい》には私はひどい仕打ちをいたしました。酒を飲
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