てくださいまし。
親鸞 心配なさるな。私はむしろあの人は純な人だと思っていますのじゃ。
慈円 あまりひど過ぎると思います。
良寛 (涙ぐむ)お師匠様。私はなさけなくなってしまいました。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から4字上げ]――黒幕――

      第二場

[#ここから3字下げ]
舞台一場と同じ。夜中。家の内には左衛門、お兼、松若三人|枕《まくら》を並べて寝ている。戸の外には親鸞石を枕にして寝ている。良寛、慈円雪の上にて語りいる。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
慈円 夜がふけて来ましたな。
良寛 風は落ちましたけれど、よけいに冷たくなりました。
慈円 足の先がちぎれるような気がします。(間)お師匠様はおやすみでございますか。
良寛 さっきまで念仏を唱えていられましたが、疲れて寝入りあそばしたと見えます。
慈円 すやすやと眠っていられますな。
良寛 お寝顔の尊い事を御覧なさいませ。
慈円 生きた仏様とはお師匠様のようなかたの事でしょうねえ。
良寛 私はおいとしくてなりません。(親鸞の顔に雪がかかるのを自分の衣で蔽《おお》うようにする
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