打つ気か。(親鸞の杖を取って振りあげる)
親鸞 良寛。手荒な事はなりませぬぞ。
[#ここから5字下げ]
親鸞二人の中に割って入る。左衛門親鸞を打つ。杖は笈《おい》にあたる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
慈円 お師匠様早くお出あそばせ。(左衛門をさえぎる)
松若 おとうさん。おとうさん。(うろうろする)
お兼 (まっさおになる)左衛門殿、左衛門殿。(後ろから左衛門を抱き止める)
左衛門 放せ。ぶちなぐってやるのだ。
[#ここから5字下げ]
親鸞、慈円、良寛、戸の外に出る。左衛門|杖《つえ》を投げる。杖は雪の上に落ちる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
松若 おとうさん。おとうさん。(左衛門にしがみついて泣く)
お兼 (外に飛んで出る。おどおどして親鸞をさする)痛かったでしょう。許してください。私どうしましょう。おけがはありませぬか。
親鸞 大事ありません。托鉢《たくはつ》をして歩けばこのような事は時々あることです。
お兼 どうぞ私の夫を呪《のろ》ってやってくださいますな。(泣く)悪いやつでもゆるしてやっ
前へ
次へ
全275ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング