ね。
唯円 善鸞様のことだろう。
勝信 えゝ。(涙ぐむ)御臨終には必ずお目におかかりあそばさなくては。呪《のろ》いを解かずにこの世を去られては。
唯円 その事を私も心配しているのだよ。御不例の初めのころ、今度はどうも御回復のほどもおぼつかなく思われたので、弟子衆《でししゅう》が相談してね。知応《ちおう》殿が善鸞殿をお召しあそばすようにお勧め申したのだがね。あの子憎しとて隔てているのでもないものを。由ない事を言い出して、私を苦しめてくれなとおっしゃって、御不興げに見受けたので、それからはだれもそのことを言い出すものがないのだよ。
勝信 でも今度ばかりはぜひ御面会あそばさなくては。もう二度と……私はたまりません。あとで善鸞様がどのようにお嘆きあそばすでしょう。
唯円 急ぎ御上洛《ごじょうらく》あそばすよう稲田《いなだ》へ使いを立てておいた。もう御到着あそばすはずになっている。もう重《おも》なお弟子《でし》たちには皆通知してあるのだ。
勝信 早く申し上げなくては。もしかのことがあったらとり返しがつきません。あなたのほかに申しあげるかたはありますまい。
唯円 けさのうちに私が誠心こめて願ってみ
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