のだ。愛は相手の運命を興味とする。恋は相手の運命をしあわせにするとは限らない。かえではお前をしあわせにしたか。お前は乱れて苦しんでいるな。そしてお前はかえでをしあわせにしたか?
唯円 (ある光景を思い浮かべる)おゝ。あわれなかえでさん!
親鸞 恋が互いの運命を傷つけないことはまれなのだ。恋が罪になるのはそのためだ。聖なる恋は恋人を隣人として愛せねばならない。慈悲で哀れまねばならない。仏様が衆生《しゅじょう》を見たもうような目で恋人に対せねばならない。自分のものと思わずに、一人の仏の子として、赤の他人として――
唯円 (叫ぶ)できません。とても私にはできません。
親鸞 そうだ。できないのだ。けれどしなくてはならないのだ!
唯円 (眩暈《めまい》を感ずる)あゝ、(額に手をあてる)互いに傷つけ合いながらも、慕わずにはいられないとは!
親鸞 それが人間の恋なのだ。
唯円 (独白のごとく)あゝ、いったいどうすればいいのだ。
親鸞 (しずかに)南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》だよ。(目をつむる)やはり祈るほかはないのだよ、おゝ仏さま、私があの女を傷つけませんように。あの女を愛するがゆえにとて、ほかの
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