から晩《おそ》く帰りました。私たちが本堂に行ったら、仏壇の前にうつぶして泣いていました。顔は青ざめ、目は釣《つ》り上がって、ただならぬさまに見えました。私たちはいつまでも、ほっておいては、唯円殿の身のためでないと存じましたので、ねんごろに意見いたしました。
僧一 寺のため、法のためを説いて、くれぐれも諭《さと》し聞かせました。けれど耳にはいらぬようでございます。
僧二 自分のしている事をあまり悪いとは思っていないように見えます。自分でそう申しました。
僧三 なんという事でしょう。その遊女と夫婦約束をしたというのです。そして私たちの目の前でその女をほめたてました。
僧一 私はねんごろにものの理と非を説き、法のために、その遊女を思いきるように頼みました。けれどあくまで思い切る気は無いと言い切りました。
僧二 おしまいには法と恋とどちらもできなくてはうそだと言い出しました。もう我れを忘れて狂気のようになっていました。
僧三 私たちの意見を聞きいれぬのみか、反対に私たちに向かって、説教しょうとする勢いでした。
僧二 なにしろ驚きました。あきれて、浅ましくさえなりました。さすが忍耐深い永蓮《よう
前へ
次へ
全275ページ中216ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング