れを善い人と思うか、悪い人と思うかと真顔でおっしゃいましたから、私はあなたのように心の善《よ》い人は知りませんと言ったら、ほんとうにそう思うかとおっしゃるから、あなたにはお世辞は申しませんと言ったら、涙ぐみあそばしてね。かえで、私はほんとうは善い人間なのだよ。皆が悪口を言うような人間ではないよ、私を悪く思ってくれるなとおっしゃいました。ちょうどその日お座敷で私に無理にお酒を飲ませたり、いたずらをなすった夜でしたのよ。
浅香 つきあうだけ深みの出る人でしたよ。私はあのように手ごたえのあるお客にぶつかった事はありませんでした。
かえで あなたと善鸞様とはいったいどんな仲だったのですの。私は今でもよくわからなくてよ。
浅香 (さびしく笑う)それはあなたと唯円様とみたようなのとは違いますよ。お互いに年を取っていますから。
かえで だってどちらも愛していらしたのでしょう。
浅香 それは愛していましたとも。
かえで ではどうしてあんなにして別れてしまったの。
浅香 それが人生のさびしいところなのよ。私もあのかたもそのようにできるようなさびしい心になってるのよ。今のあなたにはわかりませんけれど。

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