えで そうお。でもいつも思い出すでしょう。
浅香 思い出しますとも。
かえで 今度はいつ京にいらっしゃるの。
浅香 いつだかわかりません。
かえで さびしいでしょう。
浅香 (涙ぐむ)ねえさんはそのさびしさにもうなれているのよ。
かえで 私はなんだか心細くなるわ。
仲居 (登場)かえでさん、お花、そのままですぐ来てください。
かえで あゝ、いやだ。今夜だけは出たくない。お座敷などへ出るような気分ではないわ。
浅香 でも辛抱して出ていらっしゃい。さっきの今ですから出ないとおかあ[#「かあ」に傍点]さんがそれこそたいへんよ。
かえで しょうがないねえ。(鏡台の前にすわり、ちょっと顔をなおしてすぐ立ち上がる)ではちょっと。
浅香 (火鉢《ひばち》のそばにもどる)お早くお帰り。
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かえで退場。しばらく沈黙。
[#ここで字下げ終わり]
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浅香 (火箸で灰をならしつつ)あゝ、火もいつのまにやら消えたそうな。(ため息をつく)私の心はちょうどこの灰のようなものだ。もう若い情熱もなくなった。かえでさんのような恋はとてもできない。自分の不幸
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