ぐむ)
村萩 何も堪忍するの、しないのっていう段ではないのですけれどね。話のついでに言ったまでの事ですよ。あれではかえでさんのためにもならないと思って。
浅香 ありがとうございます。(くちびるをかむ)
村萩 そんなに気に留めなくてもいいことよ。ではまた寄せてもらいます。(立ち上がる)
浅香 まあ、いいではありませんか。
村萩 いずれまた。花合わせにのぼせてまだ夕方の身じまい[#「身じまい」に傍点]もしていませんから。
浅香 そう。ではまたいらしてください。
[#ここから5字下げ]
村萩退場。浅香、ちょっとぼんやりする。それから花合わせを箱に入れる。それからまた考え込む。やがて気を替えたように立ちあがり、鏡台の前に行きてすわる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
浅香 (鏡を見つつ)ほんとに少しやせたようだ。(頬《ほお》に手を当てる)やせもするだろうよ。(鏡台の引き出しから櫛《くし》を出して、髪をなでつける)このようにしてなんのために身じまいをするのだろう。自分をもてあそびに来るいやな男――自分の敵《かたき》に媚《こ》びるために自分の顔形を飾らなくて
前へ 次へ
全275ページ中178ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング