ど。私はあなたは自分で自分の魂を侮辱していらっしゃると思います。ひねくれて物を反抗的にお考えなさると思います。私はあなたのそうおなりなさった道筋に無限の同情をささげます。しかしあなたの歩み方は本道をまともに進んでいらっしゃらないと思います。お師匠様が私に常々おっしゃるには、苦しい目に会ったとき、その罪が自分に見いだされない時は不合理な、恨めしい気がするものだ。その時にその恨みを仏様に向けたくなるものだ。そこをこらえよ。無理は無いけれどもじっ[#「じっ」に傍点]と忍耐せよ。相構えて呪うな。その時にその忍耐から信心が生まれるとおっしゃいました。墓場に入れば何もかもわかるのでありますまいか。その不合理の中に仏様の深い愛がこもっていることがわかったとき、私たちは仏様を恨んだ事を恥じるような事はありますまいか。人間の知恵と仏様の知恵とは違うのではありますまいか。
善鸞 あなたのお言葉は単純でもまっすぐです。幼くても知恵が光っています。私は鞭《むち》打《う》たれるような気がいたします。私は考えてみなくてはならないような気がしきりにいたします。
唯円 自分の魂のほんとうの願いを殺すのはいちばん深い罪
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