しますか。
唯円 放蕩《ほうとう》な上に、浄土門の救いを信じない滅びの子だと申しています。父上に肖《に》ぬ荒々しい気質だと言っていましたよ。
善鸞 無理はありません。そのとおりです。私は滅びる魂なのでしょう。まったく荒々しい気質です。私は皆の批評に相当しています。
唯円 まああなたのように優しい御気質を……
善鸞 いや。(さえぎる)あなたの前に出ると私の善い性質ばかり呼びさまされるのです。しかしほかの人に向かうとまるで違って荒い気質が出るのです。
唯円 皆がよくないのだと思います。あなた自身は善いかたに違いありません。私はそれを信じています。
善鸞 (涙ぐむ)そのように言ってくれる人はありません。私は自分の気質が、自分で自由にならないのです。それには小さい時から境遇や、また私の受けた心の傷やのせいもありますがね。私は御存じのように長く父の勘当を受けているのです。
唯円 …………
善鸞 父にはいろいろな迷惑をかけましたからね。さぞ私を今でも憎んでいるでしょうねえ。
唯円 いいえ。違いますよ。お師匠様は陰ではあなたの事をどれほど案じていらっしゃるか知れませんよ。
善鸞 どうして暮らしていま
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