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三条木屋町。松《まつ》の家《や》の一室(鴨川《かもがわ》に臨んでいる)
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人物 善鸞《ぜんらん》(親鸞《しんらん》の息)      三十二歳
   唯円《ゆいえん》
   浅香《あさか》(遊女)        二十六歳
   かえで(遊女)       十六歳
   遊女三人
   仲居二人
   太鼓持ち
時  秋の日ぐれ

遊女三人欄干にもたれて語りいる。
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遊女一 冷たい風が吹いて気持ちのいいこと。
遊女二 顔が燃えてしょうがないわ。(頬《ほお》に手をあてる)
遊女三 私は遊び疲れてしまいました。
遊女一 この四、五日は飲みつづけ、歌いつづけですものね。
遊女二 私は善鸞様に盛りつぶされ、酔いくたびれて逃げて来ました。
遊女三 善鸞様はいくらでもむちゃにおあがりなさるのですもの。とてもかないませんわ。そのくせおいしそうでもないのね。
遊女一 飲むほど青いお顔色におなりなさるのね。
遊女二 ばかにはしゃいでいらっしゃるかと思えば、急に泣きだしたりしてほんとうに変なかたで
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