いますか。
顔蔽いせる者 刑罰だ!(大地六種震動す)
人間 (地に倒れる)
顔蔽いせる者 (消ゆ)
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舞台暗黒。暴風雨の音。やがてその音次第に静まり、舞台ほの白くなり、うす甘き青空遠くに見ゆ。人間の姿|屍《しかばね》のごとく横たわれるが見ゆ。かすかなる音楽。
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童子の群れ (天に現わる。歌を唱う)
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すべての創《つく》られたるものに恵みあれ。
死なざるもののめぐし子に幸いあれ。
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童子の群れ (消ゆ)
人間 (起き上がり天を仰ぐ)遠い遠い空の色だな。そこはかとなき思慕が、わたしをひきつける。吸い込まれるようなスウィートな気がする。この世界が善《よ》いものでなくてはならぬという気がほんとうにしだした。たしかなものがあることは疑われなくなりだした。私はたしかに何物かの力になだめられている。けれど恵みにさだめられているような気がする。それをうけとることが、すなわち福《さいわ》いであるように。行こう。(二、三歩前
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