り。……土金相兼という吉相だ。……さて此方は一七の間取り。僧道ならば僧正まで進む。……それから此方が八九の間取り。……仁義を弁え忠孝を竭《つく》す。子孫永久繁昌と来たな。……それから此方は七九の間取り。……うん、そうか、あの下に、金銀が蓄えてあると見える。金気が欝々と立っている。……さて、あいつが九六の間取りで庭に明水の井戸がある。薬を製する霊水でもあろう。六四の間取りがあそこ[#「あそこ」に傍点]にある。……公事訴訟の憂いが無い。……戌亥に二棟の土蔵がある。……即ち万代不易の相だ。……戌にもう[#「もう」に傍点]一つの井戸がある。……一家無病息災と来たな。……グルリと土塀で囲まれている。……厩《うまや》が二棟立っている。……母屋の庭は薬草園だ。……」
由井正雪は感心した。
正雪は一代の反抗児、十能六芸武芸十八番、天文地文人相家相、あらゆる知識に達していたので、曾て驚いたことが無い。
それが驚いたというのだから、よくよくのことに相違無い。
「さて、これから何うしたものだ」
彼は思案に打ち沈んだ。
「路に迷った旅人だと、嘘を云って乗り込もうか。いやいや看破かれるに違いない。では正
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