かり」に傍点]抑えている。そこから流れるのは血であった。
七
「ひどい[#「ひどい」に傍点]ことをなさる、由井正雪殿」
老人は相手を怨むように云った。
「お互いでござるよ、鵞湖仙人殿」
正雪は哄然と一笑したが「いかがでござる。傷は深いかな?」
「深くは無いが、ちょっと痛い」
「アッハハハ、お気の毒だな。……手中に握った天罰でござる」
「でも宜く心が付かれたな」
「天地人三才の筋からでござる」
「大概な者には解らぬ筈だが」
「なにさ、手相さえ心得て居れば、あんなことぐらいは誰にでも解る。……が、あれは何術でござるな?」
「さよう、あれは、十宮伝」
「南宗派乾流九重天、第一巻の其中に、矢張りあるのでござろうな?」由井正雪は鎌をかけた。
すると老人はジロリと見たが、
「さあ何うだかな、わし[#「わし」に傍点]は知らぬ」俄《にわか》に用心したものである。「それは然うと正雪殿、昨日[#「昨日」は底本では「明日」]は湖畔でお目にかかったな」
「え、それではご存じか」正雪ちょっとドキリとした。
「それに昨夜はご苦労だった。折竹探法、嘶馬《せきば》探法、いろいろ忍術をおやりのようだ
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