付けるそうでございますが、意味は同じだと存じます。天は唯一絶対ですが、その功用は水火木金土、その気候は春夏秋冬、日月星辰《じつげつせいしん》を引き連れて、風師雨師《ふうしうし》を支配するものと、私はこんなように承《うけたま》わって居ります」
「ふうん、大変むずかしいんだな。俺にはそんなようには思われないよ。色が蒼くて真丸《まんまる》で、その端が地の上へ垂れ下っている。こんなようにしか思われないがな」
 これには李白もギャフンと参った。
「地についてはどう思うな?」
 これは浮雲《あぶな》いと思いながらも、真面目に答えざるを得なかった。
「地は万物の母であって、人畜魚虫山川草木、これに産れこれに死し、王者の最も尊敬するもの、冬至の日をもって方沢《ほうたく》に祭ると、こう書物で読みましたが」
「お前の云うことはむずかしいなあ。俺にはそんなようには見えないよ。変な色の、変に凸凹した、穢ならしいものにしか見えないがね」
 これにも李白は一言もなかった。
「お前は人の性をどう思うね?」
「はい、孔子に由る時は、『人之性直《ひとのせいちょく》。罔之生也《これをくらますはせいなり》。幸而免《さいわい
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