などが、李白に敵うべき道理がなかった。
ある日美人の溺死人があった。
で、県令は苦吟した。
「二八誰ガ家ノ女、飄トシテ来リ岸蘆《がんろ》ニ倚ル、鳥ハ眉上《びじょう》ノ翆《すい》ヲ窺ヒ、魚ハ口傍《こうぼう》ノ朱ヲ弄《ろう》ス」
すると李白が後を継いだ。
「緑髪ハ波ニ隨《したが》ツテ散リ、紅顔ハ浪ヲ逐《お》ツテ無シ、何ニ因《よ》ツテ伍相《ごしょう》ニ逢フ、応《まさ》ニ是|秋胡《しゅうこ》ヲ想フベシ」
また県令は厭な顔をした。
で李白は危険を感じ、事を設けて仕《つかえ》を辞した。
詩的小人というものは、俗物よりも嫉妬深いもので、それが嵩ずると偉いことをする。
李白の逃げたのは利口であった。
剣を好み諸侯を干《かん》して奇書を読み賦《ふ》を作る。――十五歳迄の彼の生活は、まずザッとこんなものであった。
年二十性|※[#「にんべん+蜩のつくり」、第4水準2−1−59]儻《てきとう》、縦横の術を喜び任侠を事とす。――これがその時代の彼であった。
財を軽んじ施《し》を重んじ、産業を事とせず豪嘯す。――こんなようにも記されてある。
ある日喧嘩をして数人を切った。
土地にいること
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