でも立てたように、二人はじっと静まっていた。双方無駄な掛け声さえしない。しない[#「しない」に傍点]の先さえ動かない。息使いさえ聞こえない。
根気比べだと決心して、さて立ち上がった平手造酒は、水ももらさぬ構えをつけ、相手の様子を窺ったが、さっき銀之丞が感じたようなものを、やはり感ぜざるを得なかった。かつてこれまで経験したことのない、殺気といおうか圧力といおうか、ゾッとするような凄い力が、相手の体全体から、脈々として逼って来た。……「不思議だな」と彼は思った。「何んだろういったいこの力は? いったい何から来るのだろう?」……どうもはっきりわからない。わからないだけに気味が悪い。で、なお造酒は考えた。
「あいつはまるであけっぱなしだ。全身まるで隙だらけだ。それでいてやっぱり打ち込めない。不可解な力が邪魔をするからだ。それに反してこのおれは、あらゆる神経を働かせ、あらゆる万全の策を取り、全力的に構えている。おれの方が歩が悪い。おれの方が早く疲労《つかれ》る。おれの方が根負けする」
こう思って来て平手造酒は、動揺せざるを得なかった。「あぶない!」と彼はその突嗟《とっさ》、自分の心を緊張《ひ
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