[#「しない」に傍点]を握り、静かに道場の真ん中へ出た。両膝を曲げ肘を張り、ズイとしない[#「しない」に傍点]を床上へ置いた。それと見ると田舎者も、肘を張り両膝を曲げ、しない[#「しない」に傍点]の先を食っつけたが、「ちょっくらおたずね致しますだ」例のやつをやり出した。「平手様とおっしゃったようだが、そうすると平手造酒様だかね?」
「さよう、拙者は平手造酒だ」
「へえ、さようでごぜえますか。では皆伝でごぜえますな」「さよう、拙者は皆伝だ」「お前様さえ打ち込んだら、こっちのものでごぜえますな。ほかに出る人はねえわけだね。ヤレ有難い、とうとう漕ぎつけた。それじゃおいらも一生懸命、精一杯のところを出しますべえ」
二人はしばらくおしだまった。ややあって同時に立ち上がった。造酒はピタリと中段につけ、しない[#「しない」に傍点]の端から真っ直ぐに、相手の両眼を睨みつけた。例によって田舎者は、二本の足を左右へ踏ん張り、しない[#「しない」に傍点]を上段に振り冠ったが、これまた柄頭《つかがしら》から相手の眼を、凝然《ぎょうぜん》と見詰めたものである。
突き出された一本の鉄扇
木彫りの像
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