この造酒が打ち込まれたなら、もう外には出る者がない。厭でも周作が出なければならない。
 それほどの造酒が定吉の指図《さしず》で、不思議な田舎者と立ち合おうため、己が席から立ったのであった。場内しいんと静まり返り、しわぶき一つする者のないのは、正に当然な事であろう。そのおかし気《げ》な田舎者の態度に、ともすれば笑った門弟達も、今は悉くかたずを呑み、不安の瞳を輝かせていた。
 その息苦しい気分の中で、造酒は悠然と道具を着けた。彼の心には今や一つの、成算が湧いていたのであった。「恐ろしいのは一撃だ。そうだはじめの一撃だ。これさえ避ければこっちのものだ」彼は窃《ひそ》かにこう思った。「あせってはいけないあせってはいけない。こっちはあくまで冷静に、水のように澄み返ってやろう。そうして相手をあせらせてやろう。一ときでも二ときでも、ないしは一日でも待ってやろう。つまり二人の根比《こんくら》べだ。根が尽きて気があせり、構えが崩れた一|刹那《せつな》を、一気に勝ちを制してやろう。相手の不思議なあの構えを、突き崩すのが急務である」
 やがて道具を着けおわると、別誂えの太く長く、持ち重《おも》りのするしない
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