きし》めた。「考えてはいけない考えてはいけない。無念無想、一念透徹、やっつけるより仕方がない」
 で彼は自分の構えを、一層益※[#二の字点、1−2−22]かたくした。場内|寂然《せきぜん》と声もない。
 窓からさし込む陽の光さえ、思いなしか暗く見えた。
 こうして時が過ぎて行った。
 造酒にとってはその「時」が、非常に長く思われた。それが彼には苦痛であった。「打ち込んで行くか、打ち込まれるか、どうかしなければいたたまれない。とてもこのままでは持ち耐《こた》えられない……といって向こうからは打ち込んでは来まい。ではこっちから打ち込まなければならぬ」
 で造酒は構えたまま、ジリッと一足前へ出た。そうしてしばらく持ち耐えた。そうして相手の様子を見た。しかるに相手は動かない。凝然として同じ位置に、同じ姿勢で突ったっていた。これが常道の剣道なら、一方が進めば一方が退き、さらに盛り返し押し返すか、出合い頭を打って来るか、ないしはズルズルと押しに押され、つめに詰められて取りひしがれるか、この三つに帰着するのであるが、そこは変態の剣道であった。一足ジリリと詰め寄せられても、田舎者は微動さえしない。そこ
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