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甚内は刀を振りかぶった。
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北山時雨で越後は雨か
あの雨やまなきゃ会われない
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甚内はさっと甚三の、右の肩へ切りつけた。「わっ」と魂消《たまぎ》える声と共に、甚三は右手《めて》へよろめいたが、そのままドタリと転がった時、甚内は馬から飛び下りた。止どめの一刀を刺そうとした。
「まあ待ってくれ、富士甚内! 汝《われ》アおれを殺す気だな!」
「唄の上手が身の不祥、気の毒ながら助けては置けぬ」
「さてはお北も同腹だな!」
「どうとも思え、うぬが勝手だ」
「弟ヤーイ!」と甚三は、致死期《ちしご》の声を振り絞った。「われの言葉、あたったぞヤーイ! おれはお北に殺されるぞヤーイ!」
よろぼいよろぼい立ち上がるのを、ドンと甚内は蹴り仆した。とその足へしがみ付いた。
のたうち廻る馬方を、甚内は足で踏み敷いたが、おりから人の足音が、背後《うしろ》の方から聞こえて来たので、ハッとばかりに振り返った。二人の武士が走って来た。「南無三宝!」と仰天し、手負いの馬子を飛び越すと、街道を向こうへ突っ切ろうとした。と、行手から旅姿、菅の小笠
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